管理計画認定制度のポイント

管理計画認定制度のポイント

●背景

マンション管理適正化法が令和2年6月に改正されました。その改正概要には、マンションの老朽化を抑制し、周辺への危害等を防止するための維持管理の適正化が喫緊の課題と記載されています。

代表的な例でいうと、滋賀県野洲市の美和コーポB棟が上げられます。簡単に経緯を説明すると、平成30年6月の大阪北部地震で、市道に面した壁面が剥落、アスベストの露出が判明しました。結果、この分譲マンションは、令和2年7月に滋賀県野洲市の行政代執行よる建物解体を余儀なくされました。

結果的に、野洲市の税金で、分譲マンションを解体することになりました。費用は1億1千800万円。もちろん、分譲マンションには、区分所有者(この場合は、全員外部区分所有者)がいますので、その解体費を区分所有者に9件に分割して請求しています。ですが、回収できたのは、令和4年4月の情報では3件しか回収できていません。

やはり問題点は、分譲マンションを市の税金で支払ったという事実です。市民もたまったものではありません。だからと言ってそのまま放置し、アスベストの飛散を許し続けることもできません。これが引き金となり、マンション管理適正化法が改正されました。そして、認定基準を作って、国が分譲マンションの管理にも携わらざる得なくなりました。「マンション管理計画認定制度」といいます。

●国が定めた認定基準は以下のとおりです。

  • 1.管理組合および管理組合の経理に関する事項
    • ・管理者などが定められている
    • ・監事が選び出されている
    • ・年に1回以上、集会が開催されている
  • 2.管理規約に関する事項
    • ・管理規約がきちんと作成されている
    • ・管理規約内に点検時や緊急時などの専有部への立ち入り、これまでの修繕履歴情報の管理について定めた項目がある
    • ・管理組合の管理・財務情報に関する書面の交付や電子メールなどを用いた情報提供について、管理規約内で定められている
  • 3.管理組合の経理
    • ・修繕積立金や管理費など、項目ごとに経理が明瞭に区分されている
    • ・修繕積立金を別の会計として利用していない
    • ・申請直前年度の終了日時点で、3ヵ月以上の修繕積立金滞納者が全居住者の1割以内である
  • 4.長期修繕計画に関する事項
    • ・国土交通省の定める長期修繕計画標準様式にもとづいて長期修繕計画が作成され、計画の内容や修繕積立金額が集会で決議されている
    • ・7年以内に長期修繕計画の見直しおよび作成が行われている
    • ・長期修繕計画の計画期間が30年以上であり、同時に残りの期間内で大規模修繕工事が2回以上行われるよう設定されている
    • ・長期修繕計画内で、一時的な修繕積立金を徴収する予定がない(=均等積立方式である)
    • ・長期修繕計画全体の修繕積立金総額に基づいて算定された修繕積立金平均額が、著しく低額でない(※原則として「修繕積立金に関するガイドライン」に記載された下限値を上回っていなければならない)
    • ・長期修繕計画期間の最終年度に借入金の残高がない
  • 5.その他の事項
    • ・居住者名簿・組合員名簿を備え、年に1度以上内容を確認している。

以上となります。

●認定条件の「核」となるものは何か

前述の条件の中で、下線部は、修繕に関する条件、長期修繕計画、修繕積立金、修繕履歴がほとんどです。要は、修繕積立金をしっかり貯めて、長期修繕計画に基づいて、建物を適正に維持管理することが一番大事であり、それが、マンション管理適正化改正の「核」であるということなのです。

要は、大規模修繕工事を「適正な価格」で「適正な工事」を実施することなのです。その実現のために、「プロポーザル+総合評価落札方式」を推進することが、マンション管理の適正化に大きく寄与すると考えています。