「プロポーザル+総合評価落札方式」において、工事業者を決定するのはあくまでもマンション管理組合です。サポーターは、マンション管理組合が正しく工事業者を決定できるよう支援する役回りです。サポーターが業者を推薦することはありません。以下、工事業者選定支援の手順を解説します。
大きな流れとして、
と、なります。
また、管理組合において、理事会、修繕委員会がどのような権限を持って、工事業者選定を進めるのかの確認も必要です。
①既存資料の洗い出し
マンションの修繕箇所をどのように見極めていくのかを見ていきましょう。
修繕個所の見極めに必要な資料として、以下があります。
これらは、マンション管理組合に準備していただく必要がある資料でなかなか準備しづらい場合もありますが、なんとか入手してもらいましょう。なお、これらの書類を保管できていない管理組合は、書類の保管に問題があります。できたら、書類保管のルールを定めて、適切に書庫に保管してもらいましょう。
その他、特に、築40年を超えるマンションでは、給水管の更新、排水管の更新、サッシの更新の実施状況などを把握のうえ、長期修繕計画表を参考に、当マンションの工事の優先順位を提案のうえ、どの工事を優先するのか管理組合と協議する必要があります。
(長期修繕計画の無い、管理組合には、長期修繕計画の作成を提案してください。)
②劣化診断
MTSでは、劣化診断を以下のパターンで実施しています。
③その他の参考資料
国土交通省が発行している資料も劣化状況の判断基準など、参考になります。
・「マンションの建替えか修繕かを判断するためのマニュアル」
(平成15年1月/令和4年3月改訂)
・「改修におけるマンションの再生手法に関するマニュアル」
(平成16年6月/平成22年7月改訂/令和3年9月改訂)
メインサポーターは、1.の書類関係を把握した上で、マンション全体の修繕工事のあり方を提案します。その提案に対して、管理組合の意向を確認し、実際行う修繕工事を絞り込んでいきます。(なお、築20年以内の建物については、給水管、排水管、サッシ等の問題はないと思われます。)
管理組合と協議のうえ、アンケートの取得が必要であるならば、アンケートを取得して、管理組合のニーズを探ります。アンケート結果及び理事会(修繕委員会)へのヒアリングを行い、管理組合の意向を決定していきます。
(各種アンケート)
・バルコニーアンケート
・各種工事のニーズアンケートなど
劣化診断結果やアンケート等の結果を基に、実際に、理事会(修繕委員会)に、当該マンションにおいて、その是正箇所を実際に確認していただき、専門サポーターから、直接、専門的な見解とその是正方法(工事仕様)を現場で説明・協議していただくことを基本としています。
また、同時に、管理組合の困りごとや修繕工事に課題を洗い出し、見積参加業者へのプロパーザルテーマも決めていきます。
プロポーザルのテーマは、以下のようなものです。
・大規模修繕工事の周期を伸ばしたい。屋上防水の周期を伸ばしたい。
・工期を短くしたい。
・エントランスの美観を良くしたい。
その他、施工方法や工事仕様で、複数の方法が考えられ、管理組合で意見が分かれることなどをプロポーザルのテーマに選んでいます。
<見積要項書の作成>
上記内容を所定の見積要項書(資料6)まとめます。この時、概算でよいので工事金額を想定します。その内容を管理組合の承認を得て、見積業者に現場説明を行います。
公募条件については、MTSの提案の雛形がありますので、それを参考に、管理組合に提示してください。
なお、資本金は5000万円程度(マンションの規模により変更)とし、当面は関西エリアに本支店のある工事業者を原則とします。
最終的には、管理組合との協議で決定します。
管理組合で決定した公募条件を基に、建通新聞、MTSのホームページ及び館内公募の方法により、公募します。
応募書類提出は「2部」で、管理組合に提出していただきます。
管理組合に提出されれば、サブサポーターが管理組合より1部お借りして、参加業者の一覧表を作成します。
この時、サブサポーターは、参加業者名をマスキングした一覧表を作成し、「外形的評価」を行います。
「外形的評価」とは、
・会社の特徴、資本金、建設業の許可の種類
・マンション大規模修繕工事の施工実績(元請、下請。特に責任施工方式の実績)
・工事仕様書を作成できること
・社内の品質管理体制が構築されており、管理組合に品質報告が出来ること
・経営審査によるP点及びY点、技術者の人数、ISO認証取得、反社の証明等
を、評価するポイントとします。
サブサポーターにより、参加工事業者(工事業者名は、原則、マスキング)の一覧表(外形的評価シート)を理事会(修繕委員会)にて、説明のうえ、見積依頼業者を絞り込んでいきます。
なお、見積依頼業者は、見積辞退業者を考慮し、5社以上が望ましいと考えます。
①内覧会の実施
見積依頼業者が決定すると見積依頼業者の内覧会を実施します。
・内覧会の掲示
内覧会に必要な資料は
・図面(建築、給排水)
・見積要項書(資料6)
・質疑応答書(資料10)
・販売時のカタログ
となります。
マンション建物の性能の把握、見積数量の把握のために重要な資料になります。管理組合に提出を依頼して下さい。
各社、時間が重複しないように、日程を調整します。
<内覧会以外の現場確認について>
MTSの方式は、原則、工事業者の責任施工になるため、数量は、各工事業者の責任と負担において積算・見積します。また、管理組合のプロポーザル課題の提案もあり、現場調査に時間が必要なため、内覧会以外に日程で、現場確認が必要な場合があります。
<見積の提出書式について>
原則、国土交通省、長期修繕計画のガイドラインの大項目に沿った分類にて、見積を作成していただきます。これは、各部位ごとに各社の比較を容易にするためです。
また、見積要項書の仕様のとおり(以下「基本仕様」という)の見積書と提案があれば「提案仕様」の見積書の2種類を提出していただきます。なお、見積用証書記載の仕様のみの見積でも受け付けますが、提案見積が無いため、評価点は低くなります。出来るだけ、判り易い提案書の作成を依頼してください。
②総合評価の方法について
見積は、「基本仕様」と「提案仕様」の2種を2部ずつ、管理組合に期日までに提出してもらいます。見積期限になれば、サブサポーターが管理組合より、1部あずかり、総合評価シートにまとめます。
・仮設工事の評価
(侵入経路、安全対策、防犯対策、足場の計画などの評価)
・屋上防水の評価
(屋上、ルーフバルコニー、廊下、バルコニーのそれぞれの防水の種類と保証期間の評価)
・外壁工事の評価
(雨掛と非雨掛とに分けたメリハリのある提案とし、塗装の仕様内容の評価と保証期間)
・プロポーザル(提案)工事の評価
(防水工事の種類別の適切な提案、塗装工事の適切な塗材の選択と提案、シール工事の各部位の目的に応じた適切な材料の選択と提案等、
それぞれの内容がすぐれているかどうかなど)
・価格による評価
提案内容により価格が高くても修繕周期をお幅に変えることが出来る内容かどうか評価する
・品質監理と保証の評価
工事業者の責任施工であるため、工事業者の品質管理体制と評価方法及びアフターサービスの評価
などの評価の方法を説明し、理事会(修繕委員会)より、採点を付けて貰います。
各委員による総合評価シートによる採点ののち、採点者全体を総合計し、総合評価値の高い業者を選定します。
工事着手前に発注者である管理組合と工事業者との間で工事請負契約を締結し、工事金額と工期を確定します。工事請負契約書は工事発注にあたって、どのような条件作業を進めるかを示す重要な書類です。規模の大小や建設業許可の必要な工事かなどは関係なく、作成義務があります。建設業法にもあるように契約時は、両者が対等な立場にあることが大前提です。工事請負契約書に必要な事項を見ていきましょう。
●マンション修繕工事請負契約書記載事項
・民間(七会)連合協定マンション修繕工事請負契約約款(最新版)
・見積要領書(MTSで作成)
・質疑応答書
・見積要領(MTSで作成)からのプロポーザル等による変更点
・内訳明細書(契約工事業者が作成したもの)
・工程表(契約工事業者が作成したもの)
・工事仕様書(契約工事業者が作成したもの)
・品質管理体制とその報告書
・アフターサービス(メーカー保証、工事業者保証)