プロポーザル+総合評価落札方式での業者選定までの流れを、実際の大規模修繕工事の取り組み事例として紹介します。管理組合、修繕委員会のメンバーの方々も非常に前向きに取り組んでおられ、スムーズに進んだ感はあります。
所在地:京都市南区吉祥院三ノ宮西町1番地
総戸数:65戸
地目:宅地
用途地域:工業地域
建ぺい率:70%(角地適用)
敷地面積:1,704.29㎡
建築面積:802.55㎡
構造・規模:鉄筋コンクリート造地上10階建て
建築確認番号:第BCjo6大建確080号(平成18年11月30日)
計画変更確認申請:第BCj07大建080変1号(平成19年6月19日財団法人日本建築センター
建築検査済証:第BCj07大建完057(平成20年2月6日)
消防用設備等検査済証:南代19-63号(平成20年2月6日)
京都市建築物等のバリアフリー~検査済証:都建指導第2239号(平成20年2月28日)
住宅性能表示:耐震等級(構造躯体の倒壊等防止) 等級1
耐震等級(構造躯体の損傷等防止) 等級1
台風等級(構造躯体の倒壊等防止及び損傷等防止) 等級2
劣化対策等級(構造躯体等) 等級2
理事長、修繕委員長とMTSで第1回目のミーティングを持ち、業者選定までのスケジュール、特に劣化診断や住民アンケート、提示して欲しい建物に関する既存資料(住宅品質確保の該当の有無、長期優良認定住宅であるか、長期修繕計画、建築法定点検資料など)について共有を行った。
劣化診断については、2社を利用することをMTSとして提案。2社を利用することで、調査者の技量や調査個所の違いを補完できるなど、セカンドオピニオン的な効果が期待できる。
劣化診断を、フジペックと日本ペイントで実施。
その結果、
・エクスパンション部(外壁部6~8階)パネルに変形・浮き、(床6~8階)浮き
・PS内のコンクリート 最上階は施工不良(クラック?)が見られるが、下階は良好
・消火栓ボックス 上階(特に最上階)は ボックス内に発錆
・床シート めくれあり
・1階東側出入口扉 上部に反りあり(補修済み)
が、見受けられた。
その他に、
・エレベーターについて、現行法には適合しない耐震対策などの是正必要部分あり
・エレベーター枠廻りのさび対策
など、気になる点があるが、今回は大規模修繕工事には含まず、既存のメンテナンス会社との協議することをお薦めした。
また、修繕履歴があった、
・屋上防水
・機械式駐車場
・エクスパンション部
については、詳細図の提出、または改修業者への確認をお願いした。
住民アンケートを回収し、住民の要望や気づいた点を一覧にまとめた。
ここまでに、MTSとして課題に感じたのは、本来建築事務所が保管すべき設計図書・構造計算書、監理報告書など(保管期限15年)などを管理組合側が受け取っておらず、建物の状況把握が手間取ってしまうということがあるという点。
劣化診断結果、住民アンケートの結果をもとに、公募情報を作成し、新聞、MTSのホームページ、現地マンションの玄関掲示板で公募情報を発信し、見積参加業者を募る。
応募業者は、11社となり、社名をマスキングした業者一覧を作成し、それをもとに第一次選定を行う。そして、二次審査へ進む業者の5社を決定。
該当5社に対して、随時現場説明会を実施し、各社の提案を依頼。1社から辞退あり。
各社の提案資料をMTSが受取、総合評価の比較資料を作成。
二次審査を実施し、4社から2社に絞る。2社には、プレゼンを実施してもらうことを決定。
10:30から最終的に絞った2社のプレゼン。
15:00からMTSも参加し、管理組合内での協議。
その後、修繕委員(欠席委員も含む)と理事長と打合せの結果「中外商工」に決定
1.決定業者へ、契約書(案)と仕様書(案)の作成を依頼
2.修繕委員とMTSで契約内容の精査
3.4月15日にマンション臨時総会で施工業者の決定を議決
4.総会後、大規模修繕工事請負契約
5.5月に、決定業者により、住民への工事説明会
6.6月に、大規模修繕工事開始
マンション管理会社へ大規模修繕について相談したところ、管理会社が施工する場合は責任施工方式となり、見積比較ができないと言われ、修繕費があまりにも高額であったため、管理会社に一任するのが良いか検討することになりました。その後、ネットや書籍等による様々な事例を調べ、「プロポーザル方式」による施工業者の選定が良いのではないかとの結論になり、MTSにヒアリングしたところ、さらに進んだ方式として、「+総合評価方式」の提案をいただき、採用するに至りました。
途中での評価:連絡の頻度も多く、現状の動きが分かるので安心しています。すぐにこちらの疑問に対し、納得のいく丁寧な説明と、対応をしてくださりこちらの意見、住民の意見を最も大事に、修繕計画に反映して、進めてくださるので、ありがたいです。今後もこまめな連絡をいただけるようお願いします。
管理組合では、基本的に業者選定までは、修繕委員判断を理事長報告にする流れがありました。
【連絡ルート】修繕委員6名⇒理事長⇒理事会メンバー
【連絡手段】
・MTS→(メール)→修繕委員MTS担当2名→(LINE)→修繕委員
・修繕委員理事会担当1名→(LINE)→理事長
・修繕委員管理会社担当1名→(メール・電話)→管理会社/管理人
*他2名はサポート
このように、事前に管理組合での合意に至る手順が確立されているのは、いままでの相談事例ではまったくありませんでした。短期間で施工業者内定(選定)ができたのは、この管理組合が自ら行うことを実践されている現れです。